『女性美と舞踊』というバイブル
- ゼミ 横山

- 2021年11月16日
- 読了時間: 4分
更新日:2021年12月13日
深作理那
皆さんこんにちは!私は卒論執筆に向けて戦後のクラシックバレエの研究をしています。 戦後日本のバレエにおける先駆者に貝谷八百子という重要人物がいます。詳細はこちらの ホームページに飛んで見てみて下さい!
今回は彼女の数少ない著書の内の 1 つ『女性美と舞踊』について紹介したいと思います。この本は昭和22年(1947年)に若狭書房から出版されました。日本舞踊家の花柳寿美とバレリーナの貝谷八百子という、その当時第一線で活躍していた舞踊家2人が、女性美というものを自分自身の踊りと重ね合わせて語っています。
初めに断りを入れておきたいのですが、この書籍は終戦後二年余りで出版されているため、少し現代の考え方とは異なる部分があると思います。しかし、この現代にも必要であると感じられる考え方も含まれていますので、そちらに注目していただけると幸いです。

写真左下が貝谷八百子

写真:『女性美と舞踊』
自信をもつという事
常に自信満々でいたいといったところですが、自分について確信することは難しいですよね。貝谷はこのことについて、「自信を持つ生活」という章で語っています。この章を読んでいてまず感じたのは、 THE 昭和!!の女性の奥ゆかしさです。
「日本の女性の気を付けなければならないと思うことは、御上がりなさいといっても上がらない、召し上がれと言っても召し上がらない。どうして、ああ遠慮するのだろうかとも思いますけれども、私はそういうことをいうと日本の女性ではないようですけれど、例えば、又、あの人に紹介しようというとはにかむ、このはにかむことが日本の人には多過ぎやしないかと思います。もつと自分に自信を持つことだと思います」
私の中では、この時代の女性たちについて、厳かでいなければならない、自己主張をしてはならないというイメージがありましたが、やはり一般の女性はそのイメージ通りであったようです。現在も、ばにかみ屋は多いと私は思います。謙虚でいなくてはならない、褒められても謙遜するべきだという暗黙の了解のようなものが存在しているのでしょう。 しかし、興味深いことに、貝谷はこうした「はにかむこと」を批判して、日本人女性が自信を持つべきだと訴えています。自信をもつことの核心を突いた言葉が、この後に記載されています。
「自信をもつということばは、往々にして妙に高ぶつた、生意気なものを鼻の先に付けた感じを、抱かせるものですが、そんな感じをもつた自信ならば、それは傲慢というものです。字の示す如く自己に信念をもつ、自分を信ずる、矜持だと思います」
自信を持つということは、ただの傲慢ではないということが記されています。「自己に信念を持つ」という言葉は、貝谷八百子の経験から出てきたものだと思います。彼女は17 歳の頃に帝国劇場でソロデビューするという華やかな経歴をもっていますが、当時大変なバッシングを受けたのだとか。相当な強い信念がないとここまでやってこられなかったのでしょう。この一行からも、貝谷八百子という人物がどれだけ力強く美しく生きていたのかという片鱗が見える気がします。

写真:本文 P99~100
女性美の本質
ところで皆さんの考える美とは何でしょうか?私は美というのはその人の内側からにじみ出てくるものだと思っています。貝谷八百子も、女性の美についてこう記しています。
「女性の美というものは、矢張り、精神から発動するものでなければ美と言えないのじゃないでしょうか」
貝谷は、日本人離れしたプロポーション の持ち主でしたが、そんな方でも美というものが「精神から発動する」と考えていたのでした。実際に、彼女は心の内側から美しさがにじみ出ていたのであろうなと想像しました。 続いて貝谷は、美に対するストイックな態度を見せています。
「私は強い美に憧れる。又、強い美を作りたいと思います。けれども、自分の身体からそれだけの美が作れるか未だに分からないけれども、矢張り信念というものを持つて、自分の個性を創って行きたい。努力です。だから結局勉強です。美は一つの勉強だともいえましょう」
ここでも信念という言葉が登場しました。やはり貝谷八百子は、譲れない強い思いを持っ た人だったのだろうということが伝わってきます。美に対しての追求を諦めず、その追求した美を舞台でも活かして、また考えてを繰り返してバレエを踊っていたのであろうと思います。ハッキリとした目標設定と、それに対して突き進んでいくストイックさはまさに、私たちにとっても参考になる「美しさ」のあり方といえるでしょう。

写真:本文 P102~103
最後に
もともと私は、貝谷八百子という人物がどのような人だったのかというものを知りたいとい う思いでこの本を読んだのですが、現代を生きる女性にその内容をもっと伝えたいと思わせる本でした。今でも心に沁みる美に対する貝谷の名言には、彼女が個を失わないように強く生きた証というものが刻まれているように思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!!
文責者 深作理那

写真:貝谷八百子(『女性芸術家の人生 十二支別・易学解説ー10 酉年編』より)
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