top of page

令和版『ベルばら』について

  • 執筆者の写真: ゼミ 横山
    ゼミ 横山
  • 1月7日
  • 読了時間: 4分

桑原菜緒


はじめに


宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら(通称:ベルばら)』は池⽥理代⼦⽒による漫画を原作とした舞台作品で1974年に初演以来、宝塚歌劇団の代表作の⼀つとして多くのファンに愛されている。フランス⾰命を舞台として描かれる恋愛物語だが、⼤きく分けて2つのパターンが存在する。トップスターがフェルゼンという役を演じるもの(「フェルゼン編」「フェルゼンとマリー・アントワネット編」)とトップスターがオスカルという役を演じるもの(「オスカル編」「オスカルとアンドレ編」)である。これまでパターンを変えて何度も再演されてきた『ベルサイユのばら』は初演の1974年から50周年の記念すべき年となる2024年、10年ぶりに雪組で「フェルゼン編」として上演された。物語の⼤枠のストーリーに変わりはないのだが、新場⾯、新演出が加わり、「令和の『ベルばら』」として好評を博した。



令和の『ベルばら』演出について



公演ポスター解禁時や公演初⽇前の宝塚歌劇専⾨チャンネルの放送内容などから、今までのベルサイユのばらの良い部分は残しつつも新演出、新⾐装などにより「令和の『ベルばら』」として⽣まれ変わるのではないかという期待がファンの間で⾼まっていた。本稿では以前の演出が変更になっている場⾯を紹介したい。


通称ボートの場⾯と⾔われていた箇所がピンクの薔薇の場⾯(夢幻)へと変わっていた。上⼿下⼿の花道からバレエのチュチュとトゥシューズを履いた薔薇の精(トゥ)が1人ずつ、合計2⼈出てきて、本舞台ではピンクの⾐装を着た薔薇の精が20⼈ほど踊る。途中で舞台の中⼼にある⼤きな薔薇のセットからフェルゼンとマリー・アントワネットが出てくるのだが、舞台上にはスモークが炊かれ、ポスターと同じ華やかなピンクの⾐装で踊っている様⼦からはまさに夢の中にいるような気分を楽しむことができる。


特に演出が⼤きく変わったのは第2幕冒頭の市⺠の怒りを表したダンスナンバーである。⾰命下に⽣きる市⺠として30⼈ほどのメンバーがそれぞれ全⾝を大きく使って憎しみ、悲しみ、様々な感情を表現しており、圧巻だった。1つ前の場⾯、2幕プロローグの⼩公⼦と⼩公⼥がメインの華やかな場⾯から⼀気に曲調、⾐装、雰囲気が変わり、あえて台詞ではなくダンスで市⺠にフォーカスした表現をすることに新しさと⾯⽩さを感じたことを覚えている。『ベルサイユのばら』は独特のセリフ回しや静かな動きから「古典歌舞伎」と⾔われることもあるそうだが、激しいダンスシーンを⼊れることによって休憩明けで物語から離れていた観客を物語内に連れ戻してくれるような感覚になった。また、宝塚歌劇団では男役、娘役という⼤きな違いが存在し、レビューは男役、娘役のそれぞれ役にあった振付で構成されることが多い。しかし、このダンスナンバーでは男役と娘役の違いを作らず、皆が同じ振付を踊り、通常、可憐で華やかな動きが多い娘役タカラジェンヌが男役と⼀緒に激しいダンスを踊っていることも新鮮でとても印象に残った。



世代を超えて……



『ベルサイユのばら』を語る上で⽋かせないのが数々の名曲だ。「愛あればこそ」や「ごらんなさい」など作品を象徴する楽曲は初演から今⽇に⾄るまで幾度となく歌い継がれ、観客を作品の世界に引き込んできた。


2024年公演では、従来の楽曲のほとんどは健在だが、⼀部新しい楽曲が増えるなどの変更があった。しかし、ストーリーの転換点や登場⼈物の⼼情を深く印象付ける重要な役割に変わりはない。特に『ベルサイユのばら』の代名詞とも⾔われる「愛あればこそ」は印象的で、「愛それは⽢く」「愛それは強く」という歌詞の通り、愛を歌い上げ、冒頭ではマリー・アントワネット、フェルゼン、オスカルが歌い、2幕ではアントワネットが処刑台に向かうクライマックスのシーンで使われている。「愛」という言葉を繰り返す歌詞は観客の⽿を惹きつけ、まさに『ベルばら』の世界に没⼊させる代表曲だと感じ、世代を超えて歌われる理由を理解した。


ここでひとつ、個人的に『ベルばら』の曲のエピソードを披露したい。作品を観劇後、その余韻が冷めやらぬまま、気づけば「愛〜愛〜愛〜」と⼝ずさんでいた。するとそれを聞いた⺟が私の⿐歌に重ねるように同じメロディを歌い出した。約40年前に⺟が初めて『ベルサイユのばら』を観た時に⼼掴まれた曲を令和の今、私と⼀緒に歌っているということに感動し、世代を超えて同じメロディを通わせることができる『ベルばら』の⾳楽の魔法を感じた経験だった。



最後に



今回は2024年に宝塚⼤劇場・東京宝塚劇場にて上演された雪組公演『ベルサイユのばら』を観劇した感想を綴った。初演から50年の時を経てもなお、美しさと情熱を失うことなく、時代と共に新たな演出を加え、宝塚歌劇を代表する作品の1つとして受け継がれていることに改めて偉⼤さを感じた。個⼈的に、宝塚を⾒たことがない⼈にも是⾮⾒てほしい作品だ。世代を超えて語り継がれ、⼼を重ねられる作品に出会えたことに感謝するとともに、これからも多くの⼈が『ベルサイユのばら』に出会い、魅了されていくのだろうと思うととても楽しみだ。



最新記事

すべて表示
文献紹介 『スポーツマンガの身体』

岸優希 はじめに  私は「する」「見る」の両面からスポーツに触れる中で、スポーツマンガの身体表現に惹かれてきました。二次元の絵でありながら、その迫力や質感が伝わってくるのはなぜなのか、読者の身体はどのように作品世界と繋がるのか、今回の記事では、齋藤孝氏の『スポーツマンガの身体』を手がかりに、マンガならではの身体表現の特性を整理していきます。 著者が捉えるスポーツマンガの魅力  著者はスポーツマンガ

 
 
 
文献紹介『大向うの人々 歌舞伎座三階人情ばなし』

映像身体学科4年 藤原希 私は卒業論文で、芸能における観客と役者の相互影響の関係性について研究したいと考えています。今回は、山川静夫の『大向うの人々 歌舞伎座三階人情ばなし』(講談社、2009年)を読み、大向こう(おおむこう)という歌舞伎の観客たちがどのように舞台に影響を与...

 
 
 

コメント


  • Instagram
  • Twitter

©2020 by 立教大学映像身体学科芸能研究ゼミ。Wix.com で作成されました。

bottom of page