ジャニーズは努力の人
- ゼミ 横山

- 2022年6月7日
- 読了時間: 5分
加藤凪
私は卒業論文執筆に向けて、ジャニーズ事務所のジャニーズJr.育成についての研究をしています。ジャニーズ事務所は数十年にわたって成功を収めている大手事務所ですが、若手の育成方法は独特です。芸能事務所としての成功の秘訣が隠された、その独自の育成法を明らかにしていこうと考えています。
今回は2019年に新潮新書から出版された霜田明寛の『ジャニーズは努力が9割』についてご紹介します。この本では、何人かのジャニーズタレントの名前を実際にあげながら、ジャニーズで成功するのは才能の人ではなく努力の人であるということ、そしてジャニー喜多川の教育論について語られています。全体を通してジャニーズ事務所の、およびジャニー喜多川の人材教育に対する考え方における興味深いことがいくつか書かれていたので、そこに注目しながら紹介をしていきたいと思います。

自分がどの位置にいるのかの自覚
人はなぜ努力をするのでしょうか。この本にはこのような言葉がありました。
自己評価の低さと、目標の高さの差。その差が、人が「頑張りたい」と思える道のり、すなわち“努力できる理由”になる。
つまり自分が劣っている自覚を持っているから、設定した高い目標に向けて頑張れるというのです。たとえばジャニーズは歌やダンス、演技、MC、キャスター、モデルなど実に多種多様な活動をしています。彼らの本業はアイドルであって、それぞれの分野を専門としている訳ではないですから、ジャニーズタレント本人たちも専門の方々よりも劣っている、または周りから劣っているとフィルターをかけて見られるという認識があるのでしょう。
この本には数多くのジャニーズタレントの実例が出てきますが、ここではKAT-TUNの亀梨和也について述べられている章を例にあげたいと思います。亀梨はスポーツキャスターとしても現在活躍していますが、過去には「アイドル」という言葉でやることに対するハードルを下げられた経験があるのだといいます。
しかし、亀梨にはアイドルだから一人前にできなくても良いという意識は全くありません。認められるため必死に努力をして、なおかつアイドルであることを自らのハードルをあげる材料にしてしまっているというのです。そのことは亀梨本人の言葉からうかがうことができます。
「アイドルは求められたところで最高の結果を出す、『最強』の存在でなければいけないと思うんです。音楽でも芝居でもキャスターでも、その筋の専門家に囲まれる中で『できるね』と言わせるために、人より勉強して、人より多くの時間を費やさなければいけない」
亀梨は、アイドル、ジャニーズである自分はその道を専門としている人たちより劣っていると見られているのだということを自覚した上で、その期待を裏切るような結果を出していこうという目標を立て、その実現に向けて努力をしているのです。
他にも、圧倒的カリスマであるイメージが強いがそれは実は未来の自分像に向けて努力した結果である木村拓也や、喋りが苦手分野であったにも関わらず努力によってそれを得意分野にした中居正広、与えられた仕事を頑張りながら自分のやりたいことを続けていた結果自由を得た大野智など、十数人の名前をあげながら努力によって特別を手に入れるプロセスが書かれていました。
ただ、自分の位置を自覚するには、亀梨がスポーツキャスターに挑戦して他より劣っていると見られていることを自覚していたように、何か挑戦する機会を得ることが必要であると考えられます。もちろん自分で掴み取った機会もあるでしょうが、若手には特に事務所側が機会を用意していることもあります。
ジャニー喜多川による人材育成
滝沢秀明について書かれた章には、滝沢がジャニー喜多川に言われたという言葉があります。
「ユーに10あげるから1返しなさい」
滝沢は今まで多くのことをジャニー喜多川から与えられ、今は後輩育成という形で1の分を恩返ししている状態だと言います。レッスンは無料で受けられ、歌番組やバラエティ番組に出る機会を与えるなど、ジャニー喜多川は事務所の若手に対してたくさんの環境・ものを与えますが、ここでその与えられたものをうまく生かすかどうかは自分の努力次第になってきます。
「踊りのうまい下手は関係ない。うまく踊れるなら、レッスンに出る必要がないでしょう。それよりも、人間性。やる気があって、人間的にすばらしければ、誰でもいいんです」
これはジャニーズJr.の選定基準についてジャニー喜多川が語った言葉です。かれがジャニーズJrに求めていたものは、「人を惹きつける才能」ではなく、「やる気」と「人間的なすばらしさ」で、つまりは与えたものを無駄にせず「努力できること」「頑張れること」だったのです。
またジャニー喜多川は他にも若手の育て方に特徴がありました。それは、褒めて伸ばす人、叱って伸ばす人を見極めたこと、違ったものの見方をする者同士でグループを組ませることです。これに関してはKinKi Kidsが良い例で、堂本剛は褒めて認めて伸ばすのに対し、光一は叱って伸ばしていたといい、さらに二人は互いに理解ができない相手であるといいます。このようにジャニーは、若手の教育において、個人個人の特性に合わせて若手を頑張らせ、異なる者同士を組ませることで、互いを成長させて新しい何かを生み出すという手法を取っていたのです。
最後に
この本を通して、ジャニーズタレントは才能の人ではなく、各々が凄絶な努力をしてきたこと、ジャニー喜多川はその努力ができる人を選定し、大所帯でありながら個人個人の特徴をきちんと把握した上でそれに合わせて努力を促してきたことがわかりました。卒業論文ではこれらの情報をもとにさらにジャニーズ事務所の人材教育について知見を深められたらと思います。最後までお読みいただきありがとうございました!
文責者 加藤凪

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