top of page
検索
  • 執筆者の写真ゼミ 横山

スポーツ実況の準備と方法

『スポーツ実況の舞台裏』より

秋山 優真


私は、様々なスポーツをテレビを通して観戦してきた中で、スポーツの実況というものに興味を持つようになりました。今回の記事では、四家秀治氏の『スポーツ実況の舞台裏』を読んで、実況アナウンサーがどのような準備をし、実況に臨んでいるのか、またどのような苦労があるのかを見ていきます。


(著者撮影)

スポーツ実況中継とは

著者はスポーツを行っている様子を伝えるスポーツ中継において、スポーツ実況アナウンサーは「そのスポーツの魅力を細大もらさず的確に視聴者に伝える役割を担っている」(p. 17)と述べています。テレビかラジオによって目的は一緒であっても必要な仕事は異なってきます。「ラジオの実況は言葉で映像をつくる仕事、テレビの実況は映像をフォローする仕事」(p. 27–28)と述べられているように、必要な実況や言葉の使い方が変わってくると著者は述べています。ラジオは情景描写をし続け、テレビでは届いた映像を基に瞬時に判断しそのフォローをしていくような実況が必要になると考え準備を行っています。では、どのような準備を実況アナウンサーが行っているのでしょうか。


実況アナウンサーの準備

著者によると実況アナウンサーとして絶対的に必要なのは、出場している選手の情報とその競技自体のルールの2つです。

 

重要なことは、実況を行うスポーツがどの程度一般的に知られているかを認識しておくということだといいます。確かに、普段からテレビなどで多く中継されている野球を見ているときに、「ヒットとはバッターがボールを打ったことに出塁したことを言います」などといちいち言われることはありません。しかし、普段はそこまで多く放送されていないラグビーなどを見たときに「トライとは相手ゴールライン内にボールを接地させることで得点になります」と言われれば、ルールを理解でき、より楽しく観戦できるなと思います。このように、どれだけ多くの人がそのスポーツを知っているかということも考えながら著者は準備を進めています。


さらに、著者はどのようなレベルで競技を行っているかどうかも実況を行う上での重要なポイントになってくると述べています。具体例として、プロ野球と高校野球では実況で感心するポイントが変わる点を指摘しています。プロの選手が普通の内野ゴロをダブルプレーにしても取り立てて騒ぐことはありませんが、高校球児が同じようなプレーをしたならば「ナイスプレー」と叫ぶように実況が変わります。つまり、同じようなプレーであっても競技のレベルによっても実況が変わってくるということです。


野球の実況

著者は、野球というスポーツには1球ごとに間が存在しているため、解説者との話がしやすく、よほど投球のテンポが速くない限りは様々な情報を話すことができ、実況アナウンサーが準備として集めた資料を活かすことができるスポーツであると述べています。そして、実況アナウンサーは、球場に早く入り練習の様子を見学したり、選手にインタビューを行ったり、試合中に話す情報を集めていくそうです。


一方で、打者が打ったり、ランナーが塁に居たりするとそのような選手の詳細情報を話すよりも試合の状況を伝えていくことが重要になります。「ホームベース上のクロスプレーになった時などはそこに至るまでの打球、ランナー、三塁ベースコーチの動き、野手の守備位置や中継プレーなど、目がいくつあっても足りないほど一瞬でいろいろな状況を把握し、時には即時描写もしなければいけなくなります」(四家2016)と説明されているように、試合の状況を一瞬で整理し、それを言葉で表現していかなくてはならないということになります。


著者は、そのような中で重要なのは「緩急」だと話しています。状況に応じて「緩」と「急」を使い分けなくてはなりません。「緩」というのは試合がそこまで動いていないときの様々な情報を話すときのこと、「急」は試合が大きく動くときに、一つも漏らさずに情景を描写していくことを指します。このようにうまく「緩急」を使い分けることが解説者にとっては重要な要素になるということです。そして、野球は特に緩急が分かりやすいスポーツであり、スポーツ実況の技術を身に付ける格好の材料であるそうです。野球というスポーツはスポーツ実況ということを考えていくうえでは欠かせないスポーツであるということが分かりました。


最後に

実況を行っていく中では様々な状況を瞬時に分析し状況に応じた話をしていくということがわかりました。その技を身に付けるためには様々な準備をし、経験を積み重ねていくことが重要であると分かりました。さらに、実況においてはどのようなスポーツにおいても重要なのは緩急だということに気づくことができました。その中で私は、緩急を作り出す発声方法に注目して、スポーツ実況の方法を調べていこうと思います。様々なアプローチをしながら発声方法やその伝承について考えていこうと思います。


参考文献

四家秀治 2016 『スポーツ実況の舞台裏』 彩流社


閲覧数:9回

最新記事

すべて表示

宮藤官九郎『ゆとりですがなにか』はなぜヒットしたのか

宮本栞里 はじめに 『ゆとりですがなにか』とは、2016年4月17日から6月19日まで、日本テレビ系日曜ドラマで放送されたテレビドラマである。ゆとり世代である登場人物の家族、恋愛、仕事を描いた、社会派日常ドラマだ。「第89回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞...

Comments


bottom of page