ダンスにおける指導方法の違い
- ゼミ 横山

- 2022年6月8日
- 読了時間: 8分
更新日:2022年6月9日
小田切美織インタビュー
浜本杏
ダンサー、振り付け家、指導者と幅広く活動をしている小田切美織さんに、指導方法や自身の技術上達などについて、オンラインでインタビューをしました。
小田切美織
2000年3月18日生まれ。3歳からダンスを始め、幼少期から子役としてミュージカルを中心に活動。代表作に2007年ミュージカル「アニー」モリー役、2008年「ピーターパン」マイケル役、2009年「葉っぱのフレディ」フレディ役などがある。高校ではダンス部に所属し全国出場を果たす。専門学校(TOKYO STEPS ARTS)に通いながらJAZZ、HIPHOP、JAZZFUNKなど様々なジャンルを学び、2018年にMnetAsianMusic Award in JAPANにてTWICE、MAMAMOOなどKPOPアーティストのバックダンサーを経験し、アーティストの道を目指すようになる。現在は母校ダンス部、他2つのスタジオでダンス指導を行いながら、ダンスボーカルグループのアーティストとしても活動を行う。

ルーツ
——はじめに美織さんのダンスのルーツについてお伺いします。ダンスを始めたての幼少期はどんなレッスンをしていましたか?
私は普通のダンススタジオではなく、子役事務所のレッスンでダンスを始めたので、がっつり振り付けをやらされてました。スパルタな環境でしたね。
——美織さんのダンスの土台は子役時代のレッスンで作られたのでしょうか。
シアタージャズ系に関しては完全にそうだと思います。HIPHOPやダンサー系のダンスに関しては専門学校で培われました。でも私自身のダンスの土台は完全に子役時代です。
——これまでで自分の踊りが変わったなという言葉はありますか?
私はずっとJAZZをやっていたからHIPHOPが全然出来なくて。高校のダンス部の先輩がJAZZもできるのにHIPHOPも物凄く上手かったんです。その先輩に「JAZZとHIPHOPは重心が違う。JAZZは胸らへんに軸があるけどHIPHOPはもっと下のお腹らへんに中心があると思って踊った方がいい」って言われて。私はそれがすごくはまって、それから踊り方が変わりました。
指導方法
——ここからは美織さんの指導方法についてお聞きしていきます。今持っているレッスンの中でどこのクラスが一番大変ですか?
キッズです。特に男の子。
——女の子と男の子で教え方に違いはありますか?
教え方は特に変えていないけど接し方は違います。女の子は落ち着いてるし飲み込みも早いんですが、男の子はすぐ走っちゃうしふざけるので、最近はよく怒ってます。
——走り回ってしまって、レッスンは成立するのですか?
最近はお約束みたいなものを作りました。先生の話はちゃんと聞くとか、鏡を触らないとか。それが出来なかったら1回注意して、次できなかったら前で座って見ててもらうからねって言うと、結局みんなダンスはしたいからちゃんとするんです。それでだいぶ落ち着きますね。
——小さい子を教える時はどんな言葉を使いますか?
4、5歳の子たちには「パーパーバツ」とか「キラキラ」とかを使うけど、小学生には自分たちで練習をさせなくてはいけないのでカウントで伝えたりします。今の子たちってステップの名前をYouTubeで調べて自分で練習したりもするんです。だからダンス用語や説明も交えて教えてます。
——指導する上で言わないようにしてることや、言うようにしてることはありますか?
小さい子たちはたくさん褒めます。でも、惜しいけど大体できてるなって時に褒めると、「全然完璧じゃないのに褒められた」ってちゃんと見てくれてないなって思われちゃうことがあるので、できてなかったら違うよって教えて、完璧にできたらいっぱい褒めます。適当なことを言わないように気をつけています。
——保育園の先生みたいですね。
そうですね。褒め方や叱り方など保育士さんと共通するところはたくさんYouTubeで調べました。
——高校生の部活のように勝ち負けがあるものと、そうではないレッスンでは教え方に違いはありますか?
レッスンはニュアンスが多少違くても最終的に楽しければいいよという感じです。高校生でも大人のレッスンでも言っていること自体は変わらないけど、勝敗が関わると一番違うのは練習の空気感ですかね。チームダンスをやる高校生、特に初心者が多いチームは揃えることで勝負しているので、細かいところまでバシバシ言います。
——高校生にはチームのまとめ方の指導もしますか?
します。普段の様子を聞いて効率の悪い練習をしていたらアドバイスをしたり、スキル以外で、みんなの気持ちや空気感が良くない時には部長や副部長に対して言い方を変えてみるように言います。空気をピリッとさせることができないと大人数を捌くことはできないので。
——具体的にはどんなアドバイスをしましたか?
声の出し方です。特に大会が近い時期の練習ではわざと声のトーンを落としたり大きい声で話したりして普段とは違う話し方をしてみなと言います。あとは固めに関してですかね。みんな手の角度や足の高さは揃えられるけどそこにいくまでの速度だったり音のニュアンスが違うことがあるので、そういうところも意識しながら練習を進めるように言います。
音の取り方
——音のニュアンスが違うという話で、美織さんは振付もやられていると思うのですが、自分が拾った音が生徒たちに伝わっていないと感じることはありますか?そのような時はどう指導していますか?
私は人が取らないような裏の音をあえて取る振り付けを作ることが多いので、結構伝わらないことがあります。そういう時は踊らせずに音を聞かせて、私が踊っているのをひたすら見せます。その音を「ダーダダッダダ」って誇張して言うとか「ひーだりっ手」と言葉を当てはめたりもします。分かりやすくして、音を聞いた時に、聞こえなかったとしてもリズムが取れるように体に染み込ませます。それでもできない子は回数で鍛えるしかないです。何回も繰り返していけば結構みんな取れるようになります。
——ではダンサーとして振付師の取った音が分からない時はどのように練習していますか?
昔から音を取るのは割と得意でした。専門学校の時に音にうるさい先生がいて。同じカウントでも「カッ」っていうのと「ドンッ」っていうのは違うからそこのニュアンスまで取れって言われたことがあって。それを私は常に意識しているので、どの音をとっているのか分からないことはあまりないんです。
——音が取れるかどうかは経験の違いなのでしょうか?
もちろん経験もあると思います。パターンがあるので、普段から裏の音を聞いたりいろんなジャンルの音楽を聴くようにすると自然と身につくと思います。センスもありますが、訓練で培えるものだと思います。私は小さい時からJAZZをやっていたので、急に拍子が変わったりする自由な音楽で耳が鍛えられたんだと思います。
自身の技術向上
——次に技術の向上について伺っていきます。振付の技術はどのように上達させていますか?
振付こそ経験だと思います。振り付けを作る授業は専門学校の時にあったけど、具体的に振り付けの作り方を教わる訳ではないんです。テーマに沿って作ったのを直されたり、こういう表現をしたいならこう動いたらいいよとかを教わる感じで。とにかく見るのと作るのが大事だと思います。あとは、他の人の振り付けを踊ってつまらないなと思ったらこういう動きが微妙なのかなとか、ここの音がはまって楽しいとか、踊っててどう思うかも大事にしています。
——指導者としての上達は先ほども言っていたように子供との接し方というのが大きいのでしょうか。
そうですね。ダンスのことよりも教育的な面での勉強が多いです。どうしたら分かりやすいか。線を引いてみたりテープを貼ってそこを順番に踏むようにしてみたり。そういうのは誰かに教わるわけではないので伝わりやすい表現とかを現場に出つつ自分で対策しています。
——ダンサーとしての技術の上達はどうしていますか?
様々なジャンルで色々な人のレッスンを沢山受けるようにしています。環境に慣れてしまわないように私は特定の人を作らないようにしています。自分の踊りを見ることも大事です。正面から動画を撮ったのを見て、それで自分が満足できるくらいに踊り込むとか。音楽番組やコンサートでもアーティストのダンスをスキルの面で見たり、バックダンサーを見たりします。とりあえずやるか見るかですね。
——エンターテイメントも学びの場にしているのですね。
そうですね。意識すれば学びは周りに溢れているので、普段からどれだけ掘り下げられるか、吸収する目で見られるかが大きいと思います。
おわりに
——最後に美織さんの今後の展望を聞かせてください。
今一番はアーティスト系を目指しているのですが、ダンスはずっと続けていきたいです。子役を辞めた時も唯一ダンスは続けていたので、踊れるうちはダンスを続けていたいし、おばさんになってもダンスの業界に関わっていたいなと思います。
——本日は興味深いお話をありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
取材を終えて
取材全体を通して、指導に関しても自身のスキルに対しても、美織さんは物凄く勉強熱心な方なのだと感じました。特に小さい子の指導では保育士さんが見るような動画を見て勉強したとおっしゃっていたのが印象的です。音楽やコンサートなど私が普段娯楽として楽しんでいるものに対しても、学びを得るアンテナを張っているということに感銘を受けました。私も高校時代に副部長をしていたので、わざと口調を変えて空気を引き締めるというのは集団を引っ張る上で大切だったなと当時を思い出しました。自身は教える側から教わる側まで、指導は小さい子供から大人まで、と様々な立場で数多くの経験をしている美織さんだからこその比較や気づきがあってとても興味深かったです。

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