新たな劇場の在り方を探る
- ゼミ 横山

- 2021年6月8日
- 読了時間: 20分
更新日:2021年7月2日
堀内真人氏インタビュー
取材日:2020年12月7日
場所:神奈川芸術劇場
藤崎春花・津田瑠奈・武川陽香・山本麻未・伊藤彩里紗

2021年に10周年を迎える、現代演劇のメッカとして名高いKAAT 神奈川芸術劇場。ここで事業部長を務めていらっしゃる堀内真人さんにインタビューさせていただきました。現場で長年活躍されてきたご経験をふまえ、コロナ禍における舞台製作に関する貴重なお話を沢山お聞かせくださいました。
コロナ禍の劇場について
──コロナの影響により、ガイドラインを守りながらの上演が行われていると思います。先日KAATの大ホールで『オレステスとピュラデス』を観劇しました。舞台と観客席の可変型の構造に助けられた部分は大きかったと感じたのですが、実際はいかがでしたか?
客席形状はホールも大スタジオも可変型なので、演目に合わせて最適な形を探して上演するようにしています。劇場関係のコロナ対策としては、公文協(全国公立文化施設協会)のガイドラインと緊急事態舞台芸術ネットワークのガイドラインがあって、そこでは舞台の前端と観客との間を2m空けることが求められていますが、その公演ではさらに間隔を空けていました。
──それだけの距離を空けるとなると大変な部分もあったのではないでしょうか?
はい。一定の距離を保つと、お客様にどうしても不自然な状況に見えてしまうこともあります。そうしたところは床機構を使って段差を作ったり、役者に後ろを向かせる演出をつけたりと、観客との距離を保ちながらも自然に見えるようにアクティングエリアを設ける工夫をしています。そういった意味では、劇場の大部分が可変型であることが役立っている部分もあります。

(KAAT神奈川芸術劇場 ホール KAATウェブサイトより)
──役者間でも稽古や本番の際に距離を保つのが大変だというニュースを見ました。舞台技術のスタッフの方々は本番など密になりやすい環境であると思いますが、仕事のやり方や意識で一番大きく変わったところはありますか?
僕らの仕事も特別な仕事ではなくて、社会にある仕事の一であって、色々語弊があるかもしれないけどパン屋さんがパンを焼くように、僕たちの仕事は舞台芸術を社会に届けるということだと思っています。つまり劇場人もそこで働く労働者であって、常に芸術的な側面とそれを実現するための労働の側面があります。そんなことも含め、社会とは無関係ではないということが非常に特殊な形ではあるけれど、すごくそのことを認識せざるを得ない状況になりました。
──演劇も社会にある職業の一つであるということですね。
たしかに普通の職場とは違う環境ですが、だから何をやっても良いってわけではなく、変えられることは変えていこうとしています。例えば、同時に大勢の人が働くことがないように、タイムスケジュールをセクションごとに分けたり、それが難しくても休憩の時間をずらすことで密を避けたり、あとは工具の共有を控えたり手指の消毒をしたりね。
──演劇の現場であるからこその意識する点などはありますか?
劇場だからこそ考えなくてはいけないこと、例えばですが、どうやって舞台の床を綺麗な状態に保つか、ですね。感染症対策の専門家によると、普通の職場では床は消毒すべきところとは考えなくてよいそうなのですが、舞台の床というのは作業するスタッフも、演者もしょっちゅう手を触れるものです。ですので、履き物を区別したり消毒したり、また床を触った後はしっかり手指を消毒する習慣づけをするなど、できることを最大限にしています。演劇を演劇たらしめる、舞踊を舞踊たらしめるために必要なことを損なわずに、あるべき形で上演していくために、可能な限りの対策を取る。それを常に考えていますね。
──演劇を演劇たらしめる、ですか。
緊急事態宣言が開けた当初、再開していく頃は、「演者同士のボディコンタクトもなるべくやめて演出しました」みたいな話もありました。実際に感染のリスクが上がるか否かはもちろん、観たお客様がどう感じるかを想像することも演劇行為の一部だと思います。そして、そこをちゃんと考えた上でおこなうのであれば、接触しないということだけが正しいわけではない、と思うんですよ。そうせざるを得ない状況がこの先くるかもしれないし、今までそう判断した人が間違っているわけでもないですけどね。表現を表現たらしめる部分はなるべく排除せずに、お客様が安心して観劇できるようなことを模索していきたいですね。
舞台技術者の育成について
──堀内さんが制作に携われた基準協(劇場等演出空間運用基準協議会)の『劇場等演出空間の運用および安全に関するガイドライン』を読み、技術作業におけるリスクの多さに驚愕しました。どんな思いを込めて制作されたのでしょうか。
あのガイドラインには各作業の注意事項や時間軸に沿ったリスク管理など、プロフェッショナルなら体に入ってないといけないことをまとめました。ですので、まず経験の浅い技術者にはそれらをきちんと言語化して共有するという意味合いがひとつ。さらに経験豊富なスタッフについていえば、例えば照明さんが「音響さんが何を考えて行動しているのか」を十分に分かっているかというと、そうでない場合もあります。そういったときにガイドラインを通して、各分野をまたいで総合的に安全について考えられるようになってほしい、という意図もありますね。

(KAAT舞台技術講座の様子 写真左堀内さん 神奈川芸術プレスより)
──現場の技術者にとってまさに教科書のような存在であることが分かりました。
あと、今のは現場の技術者に対しての話でしたが、このガイドラインは技術の現場の外側にいるプロデューサーや施設の管理者・運営者にも読んで欲しいと思っています。というのも、ガイドラインの冒頭にも記載した一番大事なことなんですが、現場の安全の最終的な責任者は舞台監督でも技術監督でもなくプロデューサーなんです。かつては「現場は現場」という風潮もありましたが、そうではなくて現場の「技術者」も現場以外の「事業の設計者」もお互いに安全に良い仕事をすることに強く自覚を持たなければならない。そういう考えもあってあのガイドラインは作られているんです。
──直接作業に関わる技術者だけに向けたものではなく、劇場に関わる全ての人に向けたガイドラインなんですね。では、ガイドラインにあるようなリスクにしっかりと対応できる人材を育てるために堀内さんが強く意識していることを教えてください。
まずは、どういったときにどんなリスクがあるのかを「把握する」ことです。表現を実現するには、どんな簡単なことでも必ず「うまくいかない」というリスクがあります。高いものがあったら倒れるかもしれない、火を使ったら燃えるかもしれない、水を使ったら漏電するかもしれない…。そういったときに、各人のレベル、まとめている人のレベル、現場全体のレベルでそれぞれ把握して、リスクを減らせるように対処することが大切です。様々なレベルについて把握していれば、各段階での責任者、誰に指示を仰げばいいのかなどもおのずと意識できますしね。

(基準協ウェブサイトより)
──何においてもまず「知る」ということが大切なんですね。
はい。「知らない」のは悪いことじゃないけれど、「知らないままにしておく」のは良くないですね。なので「分からないことがあったら聞きなさい」という感じです。
──なるほど。私も舞台照明作業に携わることがあり安全には気をつけていますが、まだまだ知らないことや意識していなかったことが沢山あって勉強になりました。
いやあ、あのガイドラインを読んでくれていて嬉しいです。
堀内さんのこれまで
──私たちのゼミでは、わざの伝承ということを大きなテーマにしています。そこで、堀内さんご自身が、舞台監督や舞台技術の技能をどのように習得してこられたのかをお伺いしてもよろしいでしょうか。
現在は、舞台技術を学ぶ教育機関(大学・専門学校)が増えています。だけど僕が若かった頃はそのような機関がほとんどなかったし、僕自身文学部出身で、当時の舞台技術者はそういう人達の方が多かったです。だから皆現場で仕事を覚えていました。今は褒められないけれど当時は朝まで事務所にいて、先輩たちが作った書類を読み込みました。そうすると、「こういう風に作ったら人に伝わりやすいのか」「こういう順番で物事を決めていくのか」とわかる。そうやって、直接は教えてもらえないことも必死に自分で考えてやっていました。
──大学時代は、どのように現場でご経験を積まれていたのでしょうか。
大学では仲間たちと劇団をつくって活動していました。大道具を自分たちで作る技術を学ぶために、大道具会社にバイトに行くようになりました。その頃に大道具スタッフとして関わった劇団の一つには、現在KAATの芸術監督である白井晃さんが主催していた遊◎機械/全自動シアターもあります。やがて、フリーランスの舞台監督として仕事をするようになりました。
──大学生時代から劇場でお仕事されていたということですか?
そうですね。まあ大学にはほとんど行ってなかったんだけど(笑)
──舞台監督としての初仕事はどのような舞台だったんでしょうか。
同じ大学出身の宮城聡さんが、僕のことを知ってくれていて、当時彼がやっていた「ミヤギサトシショー」というソロパフォーマンスの舞台に舞台監督として誘われました。それから20代は、宮城さんをはじめ、白井さんや飴屋法水さんの作品に、フリーランスの舞台監督や演出助手として関わっていました。
──当時の思い出深いエピソードなどはありますか。
1995年に、青山劇場の10周年記念作品で白井晃さん演出の「銀河鉄道の夜」に演出助手として関わりました。白井さんにとって初めての大劇場での挑戦でしたが、私にとっても初めての大劇場での仕事でした。その時の技術監督が、実は現在KAATの館長である眞野純で、これがきっかけで彼に誘われ一緒に仕事をすることになりました。
──スカウトされたということですね。どのような変化がありましたか?
それまでは小劇場の舞台監督でしたが、これ以降シアターコクーンや、出来たばかりの新国立劇場などの大きな劇場での現場ばかりになり、一気に大きな劇場での仕事を身に付けざるをえない状況になりました。そして、技術監督助手という立場から、やがて技術監督、プロダクションマネージャーと名乗るようになりました。
──KAATにつながっていく前史があったのですね。
そうですね。その後に文化庁の在外研修で渡欧する機会がありました。ヨーロッパでは、劇団やカンパニーではなく劇場が舞台芸術の中心のように見えました。社会のなかにきちんと劇場があり、町の人が劇場を自慢し誇りに思っているような空気がありました。研修を終えてからも、そんな劇場を作りたいなと思い続けていたところに、眞野がKAAT開館のプロジェクトに参画することになり、僕も技術監督として加わることになりました。そして現在は全体を管理する事業部長として働いています。いつも良いタイミングで良い出会いに恵まれていたと思います。
──他にも、在外研修が今の働き方に影響を与えていることはありますか?
1年間ヨーロッパにいて、「社会と劇場の関係」や「街に住んでいる人たちと劇場の関係」が非常に印象に残っています。これまで日本で僕らが見てきた、あるいは今いる関係とは違うものだなということを感じました。僕が考えているだけで大きく何かが変わるわけではないけれども、劇場の価値というものの中において、海外ではそういう側面が非常に強くあるんだということを意識するようになりました。(注)
(注)堀内さんが2017年に登壇された連続講座「プロフェッショナルに聞く!〜文化庁移転と文化芸術の未来〜」第5回「劇場で創造すること」でも、この話題についてコメントされている。

(KAAT神奈川芸術劇場 エントランス KAATウェブサイトより)
長塚さんには2019年からアーティスティック・スーパーバイザー(芸術参与)を務めて頂いています。長塚さんもヨーロッパに1年留学に行っていた経験があるんです。劇場が演劇ファンだけのものではなくて街に普通に暮らす人が興味を持ってもらえるようになるには、劇場がそういう場所になるにはどうすればいいのか、というようなお話をしています。これから実現していきたいですね。
KAATが目指していく姿
──劇場と住民との関わりという点で、どんなことをお考えですか?
「何かの演目を見にいくだけの場所ではない劇場」であることを考えています。例えば、劇場にカフェやバーがあって、上演がない日でもたくさんの人が気軽に足を運べるようであったり、何かアート作品があって見にくる人たちがいたり、またあるいは子どもたちが遊べる場所があって遊びにくるのでもいい。
──先ほどKAATの中にあるカフェに行ってきましたが、劇場の中とは思えないぐらいすごく居心地が良くオシャレでした。
別の劇場の話ですが、具体的な例を挙げると、福島県のいわき市にアリオスという市立の劇場があります。すごく素敵な作りで、施設内には基本的に一般開放されていて、椅子やテーブルはもちろん、敷地に大きい芝生の庭なんかもあるようなとても気持ちの良い場所です。コンセプトとして、これからどんどん高齢者も増えていくなかで地域のコミュニティや色んな人が集まる場所になってほしいという市や設計者の願いが込められています。それがオープンしてしばらくすると、地域の中学生や高校生が図書館代わりに勉強の場として使うようになったみたいで。
──劇場で勉強、新しいですね。
いわき市ではアリオスで勉強することをアリ勉というみたいです。
──ネーミングが可愛らしいです。
そうするとお年寄りが全然施設を使えなくなるから「それじゃダメじゃないか!」という声もあったそうなんですが、その時の館長さんは「学生に使ってもらうことも同じだ」と。「その代わりだらだら占拠したりしないで、お互い敬意を払って利用するという気持ちで使ってくださいと伝えていけば別に学生を締め出すことは必要ない」とおっしゃっていたそうなんです。
──素敵なお話ですね。
そのアリオスとは違いますが、KAATはコンテンポラリーで、前衛的な作品を扱っている劇場というイメージがあると思います。けれども、KAATならではの地域との繋がりをつくっていきたいですね。
──数年前のインタビューで堀内さんが、「○○さんを観たいから、こういうショーを観て高揚したいからという理由よりも、想像も出来ない何かとの出会いや、知らなかったものを知ってもらうために劇場に来てほしい」とおっしゃっていました。
それは、僕がずっと思っていることです。ヨーロッパでの経験から強くそう思うようになりました。
──私も前衛的な演劇を観劇する際、難しいと頭を抱えてしまうこともあるのですが、その難しさを最近はおもしろいと感じるようになってきました。
そのように感じてくれる観客を増やしていきたい気持ちは、今ももちろんあります。ただ、そう思っているだけでは観客が広がっていかないだろうなとも思います。もし仮に広がっていくとしても、ものすごく時間がかかるでしょう。演劇に興味がない人が前衛的な作品を観ておもしろい、とんでもないものを観た!と思うことがあるかもしれませんが、そもそも興味がなかったら劇場に来てもらえません。まだまだ演劇や劇場はマイナーな存在であるので、僕達が求める物を届けるためには、求める人(演劇が好きな人達)だけに届けていても永遠に事態は変わらないと思っています。
──難しい問題ですね。興味がない人たちに向けてはどのようなアプローチを考えていらっしゃるのですか?
演劇は誰もが分かっていることを演じました伝えましただけでは、決して良い上演とはいえません。だから、分かりやすく、受け入れらやすい作品の中にも、一瞬でも違和感を感じてもらえれば良いと思っています。ある部分で何かしら立ち止まって考えてもらうことができれば、それが一瞬だったとしても劇場に足を向けたことで初めて感じることのできた体験になると思っています。
──なるほど。そうやって幅広い多様な観客にアプローチしたいということですね。
多様性を表現していくことは公共劇場としての役割だと思います。様々な価値観や美意識、コンディションを持つ方達がいらっしゃいますし、例えば、聴覚障がいを持つ方による表現が上演されたり、観客としても聴覚障がいを持つ方が楽しんでくださるような、そんな劇場でありたいとも思います。

(愛知芸術劇場の劇場インターンにてゲスト講師として登壇された堀内さん 愛知芸術劇場インターンtwitterより)
──では最後に、開館より約10年間、KAATでご活躍されてきましたが、個人的に挑戦したいことや今後のビジョンはありますか?
もうすぐ芸術監督が交代します。実は日本ではまだ、芸術監督がプロセスを踏んで交代していくことは稀なことなんです。こうやって誰かが誰かに代わったとしても、その劇場の役割や価値は継続していかなければいけない。しかし同時に、継続していくためには変化していかないといけない。つまり、表現方法が変わっても、エネルギーや存在が変わらないようにするために、変わる必要があります。その意味で芸術監督が代わることは前向きな大きな挑戦と思っているので、これをやり遂げて、継続していけるKAATにしていきたいです。誰々がいたから素晴らしい劇場だったではなく、人が代わってもエネルギーを生み出し続けられるような姿を目指さないといけないと思っています。社会に根付いた、本当の意味での公共性をもった劇場のモデルになるまで辿り着けたらいいな、という感じです。
──KAATの現時点だけではなく、20年後、30年後を見据えておられるんですね。
オフレコって言ったところは記事に書かないでね(笑)

(KAATウェブサイトより)
──オフレコのお話も含め、今回はとても貴重なお話をお伺いして、たいへん勉強になりました。本当にありがとうございました。
~after talk~
最後に気になったことを追加質問させて頂きました。
──どう声がけをしたら劇場に学生がもっと来るようになると思いますか?
それはこっちが教えてほしいよ…(苦笑) どうなんだろうね、どう思う?
今こういう状況下ではっきり言ってお客さんは減っています。普段ならば即日完売するような公演ですら、空席が出ている。収容人数の上限が50%から100%となる時には、買っていただけるお客様は増えるけど、その分キャンセルしてしまう人もいるんですね。コロナ禍をきっかけに配信という伝え方の価値を僕たちは見つけたけれど、やっぱり演劇って同時性というか、同じ場所で同じ時間を共有することで初めて得られるものが非常に大きい芸術だと思うので…
──配信では、どうしても補えない部分ということですね。
同じ場所で同じ時間を共有するというのは、シンプルに言うと1つの条件だと思います。他の成立の仕方もあるから、このことだけが演劇が演劇であるための条件ではないし、そうでなきゃ演劇でないとも決して言わないですけど。でもとても大切な要素の1つ。なのに人が集まることが、あまりよくないとされる今の状況は矛盾しているから、色々な表現者が葛藤し続けた半年間でしたね。
──逆にコロナによって得られたことなどは何かありますか?
配信によって、やっぱり劇場に来られないお客様がいるんだという事が改めてわかりましたね。身体が不自由だったり、介護をしていたり、地方や海外に居たり…考えれば当たり前なんだけど。その場で見る100%の公演と比べれば、損なわれる魅力もあるかもしれないけど、でもきちんとアクセスできるんだとわかったことは非常に良かったです。この期間、失うものが多かったけど、数少ない得られたことですね。
──アフターコロナの社会でも配信は続けていく予定ですか?
そうだね。配信はただの収益の補填とは考えずに、コロナが収まったり、1年前に戻ったとしても、配信の価値を持って行かないとダメだろうな…。逆に辞めちゃうと、困ってやっただけになっちゃうからね、それは癪だな(笑)
お会いした当初は、堀内さんの大物オーラに全員で圧倒され緊張感の張り詰めた現場でしたが、インタビューが始まると私達未熟な学生に対して、終始丁寧にわかりやすくお話してくださり、いつの間にか緊張が解け、沢山の発見と笑いもありの充実したお時間を過ごさせて頂きました。大変お忙しい中インタビューのご依頼を快諾して下さり多大な感謝を申し上げます。
インタビュー後記
私達は、舞台芸術、芸事、スポーツなどを含む広い意味での芸能を研究しています。今回は、舞台芸術の「場」はどのように作られているのか、社会のなかでの立ち位置をどう定めているのか、それはこのコロナ禍でどういう状況になっているのか、といった問題意識から、堀内さんに取材を依頼させていただきました。この取材を通して、メンバー各々の劇場についての認識が大きく変化しました。これまでは単に、観劇をするための場というイメージを持っていましたが、地域コミュニティの場や若者の勉強の場所としてさえも機能するということを学び、これからは劇場という場に行くこと自体が一つの目的となるような時代になっていくのだと実感しました。劇場が今まで演劇に興味を持たなかった人をも巻き込んで地域にとけ込んでいくことが、舞台芸術の新たな発展に繋がっていくとも思います。劇場が今、劇場という枠にとらわれず在り方そのものが変化しつつあるということを私達の記事を通して知っていただけたなら幸いです。
藤崎春花
堀内さんが取材の中で、劇場に今後観客をさらに集めていくには「求める人だけに届けても事態は永遠に変わらない」とおしゃっていたのがとても印象的でした。社会に劇場が深く根付いていくにはどうすればいいのかということを、常に考えながら仕事と向き合っていらっしゃるのがわかりました。私も、社会の結びつきが強くなればなるほど、劇場は人と人との温かい繋がりを育む場所になると思います。だからこそ、コロナのせいでますます人間同士のリアルな繋がりが希薄になりつつある社会に、劇場が必要不可欠な場所になっていくと感じました。自分の愛することに努力を惜しまず挑戦し続けてきた堀内さんのこれまでの人生についてのお話からも、私がKAATに行く度に感じる胸の高鳴りの根源の部分に触れさせていただいた気がしました。取材内容を文字に起こし終わった時、自分達がこんなに貴重なお話をお聞きすることができたことに感動し、何度も何度も読み返しました。今回は貴重なお時間、お話を本当にありがとうございました。
津田瑠奈
私にとって「劇場」とはただ、そこに行けば日常から離れられると感じる場所でした。いわば「非日常」「非現実的」「夢」…そんな言葉を当てはめたくなる幻想的な空間です。しかし今回の取材を通して、劇場は非日常どころか、れっきとした文化活動の一つとして社会の中に存在するべきだということを学び、劇場に対するイメージが180度変わりました。とりわけ自分の中では、観客としての心構えが変化したと感じます。これからはただ作品を楽しんだり、物語の世界に浸るだけではなく、出会った作品それぞれにどんな問いかけや発信があるのかを自分なりに汲みとり、自身の芸術への感度を高めていきたいと思いました。
武川陽香
初めてのインタビュー取材ということもあり、すごく緊張しましたが、密度の濃い有意義な時間を過ごすことが出来ました。お話を伺うなかで、既存の価値観に囚われすぎずに、組織としてもひとりの人間としても挑戦していくことが大切だということを感じました。堀内さんが、これまでを振り返ってお話しされたなかで「人との出会いに恵まれていた」とおっしゃっていましたが、自ら飛び込んでいったからこそであるように思いました。新しいことに挑戦しようとするとき、なかなか最初の一歩を踏み出せないことも多いですが、今回の取材を通して能動的に生きることの重要性を実感し、また、人との繋がりを今まで以上に大切にしていきたいと思いました。これからの自分の人生にも参考になる貴重なお話を伺うことができたと思います。本当にありがとうございました。
山本麻未
私にとって人生で初めてのインタビュー取材、堀内さんのオーラに圧倒され、当日の記憶があまり残っていません。終わってこうして記事にしてみると、演劇の今やこれからについて、オフレコ話も含めてたくさんのお話をお聞かせいただくことができて、充実した時間だったなと思います。一番印象に残ったのは、堀内さんの今後のビジョンについて伺ったときに出てきた、「継続していくには変化し続けなければいけない」というお話です。現状を維持することは、簡単そうに見えて実は一番難しいように感じます。これは劇場運営だけでなく、人生においても大切な信念ではないでしょうか。これに限らず、今回多くのことを学ばせていただきました。本当にありがとうございました。
伊藤彩里紗
堀内さんの目指す「社会に根付いた劇場」の像を聞き、その姿にワクワクするとともに、劇場と距離ができてしまっている現状に悲しい気持ちが湧くのも抑えられませんでした。それだけに、感染症対策のトピックのなかで、いかに観客に芸術体験を届け、価値提供するかという具体的なお話を伺うことができて、本当によかったです。また、芸術の場にいる人間の労働者的な側面を当事者の口から聞くことで、想像以上に劇場は社会の一部としてその影響を受けているのだと理解しました。劇場に限らず、芸術という分野は利益よりも体験や学びの提供を重視するイメージがあったのですが、それだけではないという当たり前のことを、改めて実感することができました。
※記事の内容は全てインタビューが行われた2020年12月7日時点での内容になります。



コメント