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  • 執筆者の写真ゼミ 横山

新鮮な楽しさを生み続ける!!サーカス☆エンターテイメント

更新日:2023年12月18日

クロワッサンサーカス・インタビュー


中村萌乃、浜本杏、岩月七海、鈴木里夏


みなさんはサーカスを見たことがあるでしょうか。今回私たちが取材させていただいたのはクロワッサンサーカスというサーカス団です。


クロワッサンサーカスは、1990年代にヨーロッパを綱渡り曲芸で放浪したHisawo清水氏(以下「団長」)が結成した、ヌーボーシルク(新しいサーカス)と呼ばれるスタイルのサーカス団です。サーカス器具はフランスの国立サーカス学校の研修を経た団長自らが設計を行い、楽団はオリジナル楽曲を演奏します。サーカステント公演、劇場ホールや野外フェス等、様々な会場で公演を行なっているサーカス団です。


2022年10月16日から10月17日まで、ゼミのメンバーで高知県高知城で行われた『水と光のカーニバルナイト』に取材旅行に出かけ、団長さんや団員・出演者のみなさんにインタビューをしました!




(クロワッサンサーカス 公式ホームページより)


団について


——はじめに、サーカス団結成までの経緯をお聞かせください。


団長 僕が生演奏(ロックやジャズなど)との即興を交えた構成のショーをしているうちに、だんだんメンバーが増えて現在の形にまとまってきました。大勢のメンバーの利点は、多くのキャラクターが一堂に会する楽しさがあります。


 団長とQumikoさんの人間性が呼び寄せたいい仲間たちだし、今回のイベントはさらに他からもみんなが集まってきてね。


KENTA コラボレーションと交流のなかで、刺激を受けながらできたサーカス団だと思います。


——ヌーボーシルクという新たな形態のサーカス団ですが、他のサーカス団と違うところや特に意識している点はありますか。


団長 アート・舞台演出・衣装・サーカス芸・ライブミュージックの融合です。劇場やサーカステントの自主公演の場合、ストーリー性を重視した演出になっています。ヌーボーシルクということで、その時代に必要なメッセージなども打ち出しつつ、身体表現とワクワクするサーカスの世界を楽しんでもらうことです。


——コロナ禍での経営のご苦労をお聞かせください。


団長 コロナ期間中最初は皆と同じように、スケジュールされていたイベントの中止に振り回されましたが、補助金などを申請して、公演数は減りましたがしっかりとした活動がメンバー間で出来た事は良かったです。またその期間にしかできない、映像に関する実験もでき、結果とても良い時間を過ごせました。




筆者撮影

(後列左から、KENTA、Hisawo清水、わっしょいゆ〜た、松原

前列左から、遠山貴志、北京一、花火、井山、トム)


団長さんの経験について


——清水さんは曲芸をしながら36カ国放浪したとのことですが、そのときに得た経験で現在のクロワッサンサーカスに生かされていることはありますか?


団長 19歳のときにロンドンに飛び出しました。海外に興味がありましたが、観光目的でなく何か自分探しや武者修行的なもの・人生経験を求めての旅でした。着いた初日にホテルが見つけられなくて野宿したことで肝が据わりました。旅をしてパフォーマンスをして目に映る全てに感動して夢中で大陸を移動しました。クロワッサンサーカスに活かされてるとしたら、「とにかくなんとかなる!する!」的な魂かなんかだと思います(笑)。


——韓国では綱渡りで川を横断されたと聞きました。


団長 世界中の綱渡り野郎たちが集まって、女性もいて、順番に渡るお祭りでした。韓国の漢江(高さ25m、川幅1km)を渡る。やったこともなかったですし、そういう挑戦の経験でした。それができれば自信もつくし、失敗したら立ち直れないだろうなと思ったけど。できる限りの準備と練習をして臨みました。


——そのときに印象に残っていることはありますか?


団長 25メートルのタワーからは人が小さく見える程で、渡り始めると遠すぎて対岸のタワーは見えない。本当に渡り切れるのか、そもそも最初の一歩は踏み出せるのか…半信半疑の中スタート台に登りました。「とにかくやるしかない、出来る!」と自分を信じて、覚悟してスタートしました。そのあとはゴールまでその集中力を保って渡りきりました。


——そこで今に繋がっている出会い、ご縁はありますか?


団長 今、一緒に活動しているトムさんも同じワイヤーを渡りました。そこで世界中の綱渡り師と出会って知り合いになり、さくらサーカスの団長アランマルチネスとも出会い様々なサーカスのスキルや情報を教えてもらっています。


——自給自足の生活もした経験があるということでしたが、どのような感じでしたか?


団長 古民家を友人の手助けでリフォームしながら、土地を耕し野菜を作るなどしました。様々なことを近所の方が助けてくれて。その山の土地で綱渡りの練習に励みました。


——綱渡りの練習のために始めたんですか?


団長 そうです。もっとちゃんと練習するためには広い土地のある田舎だと思って。古い古民家農家を借りたのは、昔の人の知恵が詰まっているからだと思いなるべくそのまま暮らそうとしました。が、わかったのは昔の人はかなり耐えていたんだろうなーということでした。スイッチでお風呂が沸くのはやはり便利ですね(笑)でも今の私には、これくらいの薪でお風呂が沸くとかわかるスキルがあります。自分で作ると旬の野菜もわかるようになります。台所やトイレも作り、水道工事をしたりしたからサーカスの道具も作れますね!


——道具作りにもその自給自足生活が生かされてるということですか?


団長 はい。道具作りもそうだし、今15人くらいでショーを作るときに、全体の構成や計画を立てる際にも、田舎暮らしの経験が役立っていると言えるかもしれません。AをこうすればBがこうなるとか、C地点に力を加えればあちらに負荷がかかるとか、そういったことは田舎暮らしでしっかりとヘマをして、失敗を積んだから、わかるのかも…僕は体験納得派だったんです(笑)。


わざの習得について


——どのようなプロセスを経て一人前のパフォーマーになったのか、皆さんにお尋ねしてよいでしょうか。


KENTA 僕は、群馬県にあるNPO法人沢入国際サーカス学校に行き、そこでウクライナから来ていた先生に基礎を教えていただきまして、練習をして技能を身につけました。


花火 私は、学生時代は体操競技をやっていて、サーカスなんて全然縁がなかったんです。本当にいろんな仕事をやってきて、一番自分で面白いなあって思うことがだんだんわかってきました。何十年かかってだんだんわかってきたのがここら辺です。


井山 私は演奏家ですが、本当に独学なんです。何回もレコードを聴いたり、テープを聴いたり。教則本とかもなかったですから、カセットテープにダビングしましてそれを何回も。譜面も全然読めなかったんですけど、長いことやってきて今は前よりは読めるようになりましたね。


花火 私もポール独学だわ。小学校の校庭のイメージで遊んでたらできました。


わっしょいゆ〜た 僕は子供のときにこういうサーカスや大道芸のショーを見て、ジャグリングを子供の遊びという形で覚えました。いろんな道具を触りながらジャグリングとかマジックとか、見様見真似で覚えていきました。プロの芸人たちを見て、これどうやるのかなっていうのを自分で練習してやってきたっていうのが多いですね。


——独学の方も多いのですね。


わっしょいゆ〜た 独学が多いですね。一緒にジャグリングをやる友達と教え合いながらやっていきましたね。


団長 良い先生に巡り合うこともラッキーなことだと思います。自分の理解力で沢山良いものを吸収したいと思っています。僕の出会ったキャプテン・キーノというイギリスの師であるパフォーマー(映画オースティンパワーズのスタントを担当)は「A Great Entertainer」を目指せと言っていました。これは頭文字を取ると「AGE」(年齢)という謎謎です。続けるということが大事みたいな意味合いだったんだと思います。


——NHKの取材で、綱の上で寝るわざは片足を乗せるのに5年かかったとおっしゃっていましたが、途中で、向いてないから違うことをやってみようとは思わなかったのですか?


団長 結果として5年かかったのですが、その都度工夫を凝らし、情報を集めて、体を調節していましたので。とにかく、やりたいことであり、追求したいことであり、5年かかって全てのスキルが底上げされていると思っています。


——それでも続けられるモチベーションは?


団長 夢中になっていると普通のことでした。やっぱそういうのあるじゃないですか、身体が求めているというか、みなさん自然にトイレ行くでしょ?少しでもスキルの向上が感じれることが嬉しく思えれば続けていき、周りの反応も返ってきたので続けて来られたのかな?


——サーカス器具の作成も団員で行っているとのことですが、その作成技術はどのように教わったのですか。


団長 サーカスの友人から見聞きしました。また短期ですが、フランスのサーカス学校の講習を受けて、器具への力のかかり方の計算などを勉強しました。そして経験です。最新の器具や電気製品もどんどん開発されるので、チェックして取り入れていけるものには興味があります。


——パフォーマーの方が持っている道具も団長さんが設計したのですか?


団長 僕が設計したものもあります。こうした方が軽いんじゃない?こうしたら便利なんじゃない?とか考えながら。シルクハットカー(写真)は、アートディレクターQumikoさんのデザインで作りました。僕が欲しいもんって売ってないから、作るしかない。探すより作った方が早い。僕が空中に浮いてたの見た?


——どうなってるのかすごい気になりました!


団長 すごいでしょ?あれはもう考えて研究しました。実験に次ぐ実験。大変(笑)。


——そこは企業秘密ですか?


団長 まあ一応!(笑)




筆者撮影

(シルクハットカー)


指導方法について


——わざを教わったなかで、印象に残っている言葉や指導法があればお聞かせください。


団長 20歳のときにルーマニアの首都ブカレストで出会った旅人で、サハラ砂漠を徒歩で横断した前島さんという方(俳優・冒険家)には「真似るということは学ぶということだから、若いうちに沢山真似しとくと引き出しが増えるんだよ」と教えていただきました。「芸は盗むもの」と言いますが、真似るということは、行為を含め、簡単に出来るものではありません。想像して、工夫を凝らすことになります。それがとても楽しいし、すぐには解決できないことでも、誰かに相談して世界が広がって、新たなものが出来上がったりします。


——なるほど。


団長 学校やワークショップなど、丁寧に教えてくれる環境を選ぶことが可能なときもあります。そのときは、メモを持って、しっかり学んで、質問をします。先生を質問攻めにして、「それはわからないから、実際にやってみてはどうか」と言われたときに、「先生でもわからない事があるのだ」「そうか、やってみよう!」と思えたことは、自分の発想の自信に変わっていきました。


——団長さんが人に教えるときにはどのような教え方をしているのですか?


団長 俳優さんが舞台で綱渡りをするから短期間で教えるという機会がありました。その人がどういう風に体を使ってるかを見て、力が入ってたので「まずは練習するよりもこの人はストレッチをいっぱいして体柔らかくしてからやった方が良いな」とか、その人に応じて考えました。


——なるほど。練習方法はどのようなものですか?


団長 そのときは、「出来たじゃん!」みたいに言って、自信を付けながら最初少し短い、3mくらいの綱渡りをして、「出来たじゃん!あと50cm伸ばそう」とか。そうやってだんだん伸ばしていく。そうしたら「さっき出来たしできるだろう」ってなって出来ていく。そういう組み立て方で上手くいきました。


練習について


——今でもパフォーマンスをするときに恐怖を感じることはありますか?


団長 もし恐怖を感じたならば、その直感をしっかりとすぐに分析します。そして、それがただの恐怖感ならば、もうやるしかないって自分を信じてやります。自分を信じれるように洗脳する、「大丈夫」って(笑)。


——渡るときの恐怖のほか、失敗することへの恐怖もあると思いますが、対処法はありますか?


団長 失敗することはありえない。いかに成功するかしか考えてないのが理想です。あとは納得のいく練習に次ぐ練習。


——花火さんは失敗についてどのようにお考えですか。


花火 私は割と考えるかな。本番では失敗することは取り入れない。練習する段階では嫌な想定をしておかないと、受け身が取れないから。私は常に受け身をとることを考えて生きています。


団長 僕も道具を作ったりリハの準備段階のときは見ていますよ。これは危ないとか、こんなことしてはダメだとか。全部クリアにした上で本番に臨んでいるので、その心配をする必要がないというアイディアです。


——準備をしっかりしているからこそなのですね。


団長 準備でパーフェクトにする。不安要素なし。そういう気持ちで臨む、というか、本番を楽しみたい!という思いです。


花火 遊園地の乗り物が壊れるかもと思ったら乗れないのと一緒ですね。


——団の大きな特徴として楽団を率いているということが挙げられますが、普段の練習は楽団の演奏に合わせて行っているのですか?


団長 楽団の音源に合わせ練習します。細かなタイミングは実際に合わせ、ミーティングします。楽団を含め、「間」をわかった人たちで構成しているチームだと思っていますので、そして本番での音圧やエネルギーを感じる事も大好きです。


——コロナ禍の練習で苦労したことはありますか?


団長 葛城山の中腹に稽古場があり、人もいないので普通に練習出来ていました。とても時間があって、有効に使えました。


——雨の日はどんな練習をするのですか?


団長 雨降ってもなんでも常にストレッチしたいと思っています。普段の動きがストレッチになっていたら便利だなーとか考えてます(笑)。必要な場合は体育館を借りて室内で行います。1ヶ月ぐらい本番があると個人のしっかりした練習とかはできない事もありますが、みんなでやるシーンのタイミングの打ち合わせとかもします。


構成について


——パフォーマンスの構成を作る上で一番大切にしていることはなんですか。


団長 …。


 僕は団長とQumikoさんの作るアートと演出のファンタジックな世界観だと思ってる。今回出演しててそう感じます。


KENTA なんかもうセンスなんです。生まれつきというか、人間性から出てるセンスが、この空間でありショーであり全てなんですよね。団長と衣装や演出をしてくださっているQumikoさんの人間性から出てるセンスがこの空間。そういうふうに思います。何か訂正があれば(笑)。


——団長さんとQumikoさんが描く世界観を皆さんで表現しているということですか?


KENTA そうです。そこに近づいていくのが自分の向上にも繋がっていると思います。


団長 そういう方々が集まって来てくれてありがたい事です。明日から別のダンサーが加わるんですが、そうするとまた違う匂いと色になるかもです。ビーカーに色々入れると化学反応でワーっと色が変わったり、煙が出たりするように、そういう変化を楽しんでいるのかも。ボンッと爆発してもいいかなあぐらいの(笑)。


——KENTAさんがおっしゃっていたような人間性やセンスはどのように磨かれてきたと思いますか?


団長 19歳から3年ヨーロッパを放浪していたんだけど、ひとつの街に行ったらそこにある美術館や教会全部観ておいでと、小学校から高校までの塾で出会った恩師に言われたんです。そのときに、よくわからなかったけどとりあえず全部見て、それも生きているのかな。


——見て吸収するということですか?


団長 私の場合は、興味のあるものを生で若いときにいっぱい見たってことが、良かったんじゃないですかね。たくさん見たらその分自然と残るものも多いから。どっか行っちゃうものもあるでしょうけど…(笑)。


——そのとき見たものが今のパフォーマンスにも繋がっているんですね。


団長 そのとき見たもの、ということで言うと、写真を撮るときの画角を考えたり、上手な人の絵とか写真とかがなぜいいのか、よりドラマチックなのかとか、そういったことを自然に取り入れたいと思っています。


——構成や演出のインスピレーションはどこから受けているのですか?


団長 インスピレーションは、人や音楽から、たくさん来ます。珍しいものでは料理からも受けますね。


——料理ですか?


団長 コース料理とか想像すると、前菜から始まって、次のものが出てくる。ドーンとしたものが来たと思ったら、ちょっとしっとりとしたものがあって、そこからもっとバーンと肉料理みたいな。それってサーカスショーに置き換えると、最初にジャグリング、次に空中ショーがあって、大技が来て、と思ったらちょっとしっとりとしたドラマが展開してからもっとバーンとみたいな。そして最後はスーッとデザートのような音の調べ。そういうテイストの演目を並べていくんです。ボリューム感と流れというのかな。


——なるほど。そう聞くと構成で共通したものがありますね。


団長 料理に素材とかこだわりがあるとすれば、同じジャグリング出来る人でも、おしゃれだし動きが綺麗だから、この人にやってもらおうとか。ブロッコリー買ってきて芯だけ使って出す人とかいるじゃない。焼くのも電子レンジじゃ味気ないけど、炭で焼いたりするこだわりがあったり。こういうことも置き換えて考える。そういう意味で料理も参考になります。


——今回の公演で工夫されたことは何ですか?


団長 初の試みでしたし、素晴らしい才能のメンバーが集結しましたから、毎日工夫の連続です。素晴らしい食材と調理方法が選べるのですから、素晴らしいレストランにしようという気合いです。高知放送・観光局の方々と相談して、この広場で光と音がする方にお客さんが歩きながら景観とエンターテイメントが楽しめるように!と想定して作っていきました。


——そうだったんですね。フェスやライブでのパフォーマンスもされているとお聞きしました。公演ごとに客層が変わってくるのではないかと思ったのですが、それを意識して作られたりはするのですか?


団長 意識はします。器用にそういう変化に対応できれば良いですが、素直に表現する方が良いときもあり、行き当たりばったりなときもあるかも(笑)。


花火 以前はその日のショーをどのような構成でやるのかが決まっていなくて、「次KENTA君の後ひと踊りしてくださいー」のようなことをコソコソっと言われて(笑)。「最後は綱渡りして終わります」「はい」みたいな感じで、やりながら作っていました。だいぶ面白かったですけどね。最近はそのようなことはなく、前に決まっていてみんなで作っていきますね。


——パフォーマンスの作り方が変化したきっかけは何ですか?


花火 楽団から苦情があったんでしたっけ(笑)


団長 あ、そうだね。決めてくれないと何やっていいのか困るよって言われました。


花火 動く方はできることをやればいいやって思いますけど、合わせて演奏する方は大変ですよね。


——団長さん的には以前のスタイルと今のスタイルはどちらがお好きですか?


団長 インプロが生きるシーンは今もあります。出来上がった音楽もいいですが、単純に音が面白く楽しめたら良いなーというシーンもあります。台本も要ります。でも今も「ちょっとここはこうだから、こうしようか」と囁きにいくことがあります。


花火 最近も違う曲がかかってしまった際に、「この曲早く終わってしまうので、終わったら何かやってくださいとアコーディオンの人に伝えてください」と言われましたね。それを伝えたら「ええ!」と言いながらも、やってくださいました。このスタイルは結構面白いですよ。


——囁かれたときは焦りますか?


花火 面白く出来ればいいけど、出来ないと「あのときこうすれば良かったな」と思うことはありますね。何度も見てくれている人が新たな発見をしてくれるのも嬉しいですし、でも一回だけ見る人が100%のものを見られないというようなことにはしたくないと思ってやっています。同じものばかりをやりたいわけではないですね。


——自分たちがやっていて楽しいものと、お客さんが見て楽しいものだと、どのようなバランスでやっていますか?


団長 そもそも自分たちがやっていて楽しいものをすることはとても大事な事です。それはお客さんが見ても楽しいものになるんです。変なバランスを取ると筋肉痛になります(笑)。十分な経験を持ってすれば上手くいくと思うのです。「こだわり」は見せながら、もし反応がなかったら、その前の構成を変えたり、試行錯誤したりするのはやりがいがあります。


今後について


——団の中にお弟子さんの立場の方などいらっしゃるのですか?


団長 もちろん、経験豊かな先輩からは学ぶ事が多いです。

今回は、私のパントマイムの師匠である北京一さんに初の出演承諾をいただきました。リスペクトする仲間が来てくれています。一緒に公演することで、年齢に関係なくその人の特別なものを通じて影響を受けますし、自然と学ぶべきものが沢山あります。交流のなかで勉強させてもらっています。参加している皆さんもそう言った気持ちを持っておられると思います。


——明日も新しいダンサーさんと一緒にやるという話がありましたが、そういう方々は団員として迎えるのではなく公演ごとに呼んでいるのですか?


団長 そうです。今回は長丁場だから、最初からそういうふうにしようと。で、今までイベントで出会って別で出てた人、いいなーって人を呼んだりしてます。


——団員として人を増やしていくことはあまりないのですか?


団長 現在はありません。


——もしすごい熱意で「入りたいんです!」という方が来たら迎え入れますか?


団長 その人によります。そのときに考えます。そんな出会いは楽しみですね!今のメンバーは7年やってますが、様々な現場やいろんな場面をくぐり抜けて来た。そういうメンバーでコアなところをしっかりしておいて、誰か来たときに楽しめるように努力しています。


——団の演目はどんどん変わったり増えていったりするんですか?


団長 メインの技自体は、体が覚えるのに時間がかかることもありますが、変化は大切だと思っています。Qumikoさんとテーマやイメージを考えた演出をもとに、技の開発やスキルを増やすことは前向きに行なっています。少しずつのこともあれば、大きな飛躍や開発もあります。メンバーやバンマスの意見も重要です。


——現状に満足はしないということですか?


団長 良いと思って実行したことも、やってみるとさらに追求できる要素が生まれてきたら変化していくことも必要。満足している面は大事に観察し、さらに飛躍したいと考えています。


——今回も長丁場の公演ですが、途中でやっぱり変えたいな、と思って変えることもあるのですか?


団長 長丁場の場合、現地の雰囲気やお客さんの反応で変えた方が良いことが出てくるので工夫します。スキルアップも考え、次は自転車でやる綱渡りを用意してます。演出的なことと、設備的に時間がかかることもあるので。


——公演のほかに何か予定はありますか?


団長 映像とか!コロナ自粛期間に何編かを作ってみました。その続編や劇場公演でも挿入できる映像とかに手を付けたいです。(クロワッサンサーカス映像作品第1弾 「Le restaurant 」 #01


——最後に、今後のビジョンをお聞かせ下さい。


団長 公式HPの表紙にサーカステントの写真がありますが(下の写真)、それは僕らが20年前にミシンで縫ったんですよ。今もあるんですけど、更にしっかりしたサーカステントを今後の公演のために購入してあります。同じ色合いでパシッとしたやつ(笑)。それも使って客席・ステージ・公演内容含め、クロワッサンサーカスを「素晴らしく・お洒落に・摩訶不思議に」極めていきたいです。とても楽しみなんです!




(クロワッサンサーカス 公式ホームページより)


編集後記


中村萌乃

「団長さんとQumikoさんが描く世界に近づいていきたい」「そう思ってくれる人を集めている」というお話があったように、団員の皆さんが想いを一つにして楽しみながらパフォーマンスをされている姿が印象的でした。公演を見ている際、それぞれの持ち味が生かされながらもまとまりのある構成だと感じたのは、そういった理由があるのだとわかりました。また団長さんが、入念に準備をしてきたからこそ、本番では失敗しないと自信を持てるとおっしゃっていました。私は自分に自信を持てるタイプではなかったのですが、これからは団長さんの言葉を胸に刻んで色々なことに挑戦したいと思います。パフォーマンスだけでなく、考え方もとても素敵な方ばかりで、貴重なお話をたくさん聞くことができました。ありがとうございました。


浜本杏

ステージでのパフォーマンスを見て、お客さんを交えた演目のときでもパフォーマーの方と楽団の方が臨機応変な対応で息がぴったりと合っていたことに驚きました。教える教わるという関係ではなく経験を通して打ち解けていく、馴染んでいく、ということが良い信頼関係を築いていくことに繋がるのだとわかりました。団長さん含め団員の方たちはわざを習得するためにたくさんの努力を重ねてこられていましたが、それをトイレに行くのと同じくらい当たり前だとおっしゃっていたのには感銘を受けました。写真や絵画、料理など様々なものに常にアンテナを張ってパフォーマンスに取り入れる姿勢は生粋のエンターテイナーだと感じました。プロフェッショナルな方たちとお話ができてとても刺激になりました。ありがとうございました。


鈴木里夏

団員のみなさんがお互いを信頼し合っている空気感が印象的でした。年齢に関係なくお互いを尊敬し、良いところを吸収し合っている安定感が息の合ったパフォーマンスからも感じられました。また、技術の習得においてただ単に手本を真似るだけではなく、自分で工夫を凝らしながら真似ることで新たなものが生まれる可能性があることや、公演内容などについても満足せずにどんどん新しいものを生み出し、変化を加えていくこと、といったパフォーマンスを追求する姿勢に、お話を聞きながらわくわくしました。貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。


岩月七海

クロワッサンサーカスのわざにはわざの経験値だけでなく、個人それぞれが持っているバックグラウンドや様々な分野の人生経験が生かされているということを知り驚きました。団長さんの、韓国で綱渡りをした経験談や、田舎で自給自足生活がわざの練習以外でも生きているお話をお聞きして、自分もこれからの人生経験ひとつひとつを大にしていきたいなと思いました。素晴らしいパフォーマンス、忙しいなかで貴重なお話をお聞かせいただき本当にありがとうございました。




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