片岡仁左衛門の魅力
- ゼミ 横山

- 2021年2月9日
- 読了時間: 4分
『彦山権現助剣』毛谷村 観劇レポート
藤崎春花
はじめに
先日国立劇場の11月歌舞伎で念願の15代目片岡仁左衛門が出演していた『彦山権現助剣』毛谷村を観劇してきました。仁左衛門は当代を代表する立役(男性を演じる役)で容姿、口跡、演技力の三拍子を備えた俳優です。役に合わせた、爽やかさや、色気、男気のある柔軟性のある非常に高い演技力で、多くの観客のハートを掴み続けています。様々な賞を受賞されていますが平成27年には人間国宝に認定され、平成30年には、文化功労者に選ばれています。
歴が浅くてお恥ずかしいのですが、私は今年の自粛期間に初めて、Eテレで放送していた『勧進帳』で弁慶を演じている仁左衛門を観て一瞬で虜になりました。テレビを通しても伝わるダイナミックで人情深く男気のある弁慶に恋に落ちました。本当に本当にカッコよくて、テレビを見た後に色々と調べてみると御年76歳!!驚きすぎて目が点になりました。歌舞伎では白塗りをしているからか実年齢が分かりにくいですが、演技がエネルギッシュさに満ち溢れていてとても70代には見えませんでした。

(日本芸術文化振興会ホームページより)
『彦山権現助剣』毛谷村について
今回私が観劇した毛谷村は仁左衛門が高い評価を得ている義太夫狂言でした。仁左衛門が演じる主人公毛谷村六助は力持ちで人に優しくしかも親孝行という理想的な好男子で最後には師匠の娘と共に師匠の仇を討つという設定です。
最初のわずか一分間程のシーンで仁左衛門を見ていたら、上記の役の情報がすっと私の脳内に入ってきました。舞台に立っているだけで絵になり、温かいオーラが自然と溢れていて、言葉を発しなくてもその役の人ととなりを表現することが出来る名優の偉大さを身に染みて感じました。
個人的に今回の舞台で仁左衛門にきゅんとしたポイントは、力強く逞しい仕草です。具体的なシーンでいうと子供を持ち上げる場面が何度かあったのですが、大きすぎはしないけれど小さすぎない子供だったので、年齢的に毎日、数回となると辛いのではないのかなと思ったのですが、すごく楽々とひょいっと持ち上げていました。
役どころ的にも力持ちという設定なので、普通の人より簡単そうに持ち上げなくてはいけないので、そのような場面は特に表情や体幹を意識しているのかもしれないなと感じました。実際には祖父と孫以上の年齢差なのに、舞台上では、お兄さんと子供という関係性にしか見えませんでした。テレビドラマなどではそうはいかないし、現代演劇でも難しいと思いますが、歌舞伎ではそれが可能だという点が面白さの一つだなと改めて思いました。
今回は、仁左衛門の相手役で師匠の娘役を息子の片岡孝太郎が演じていて、親子で恋人関係ということでしたが、こちらも当然親子に見えることはないし、二人の初々しい恋の始まりにドキドキしてしまいました。そして、力強いキャラなのに、母思いで、女性に対して紳士的である点や、時折見せる爽やかすぎる笑顔がギャップ萌えで堪らなかったです。

(ニュートピ!サイトより)
仁左衛門の言葉
仁左衛門が、歌舞伎美人というサイトのインタビューの中で、「舞台に立つ前は嫌だと思った役でも、演じていると好きになってしまいます。その人物になりきらないとお芝居は面白くなりません。人物を演じるのではなく、人物になることが大事だと思います」と語っていました。
この言葉を読んで、私が仁左衛門の演技を観て感じたことは、全てこの言葉に尽きると思いました。役を生きているのだから、舞台上で70代に見えるはずがなかったのです。仁左衛門は大きな大病を患ったにも関わらず、復帰し再び舞台に立つことを選びました。自身も生涯修行と掲げられているように、自分ではない誰かになるということは相当な訓練、技が必要で過酷な生活を想像することは簡単です。
しかし一方でいくら歳を重ねても新しい目標との出会いや、芸を磨くことで自分の可能性を実感できることは、とても大きな喜びであり何にも代えがたい生きがいなのではないかと私は感じました。

(国立劇場歌舞伎情報サイトより)
おわりに
私は歌舞伎の現代では考えられない非日常的な空間にとても惹かれます。時にはとても豪華絢爛な世界であったり、その逆であったり、、登場人物のキャラもとてもはっきりと立っていて、分かりやすいです。同じ役だとしても、家や俳優によって、演じ方が変わる点もとても面白いです。
同世代でこちらを読んでくださった方の中で歌舞伎を観るとなるとどうしても敷居が高く、難しいし、面白くないと感じる方もいるかもしれません。けれど、国立劇場だと学割が効き安くチケットを買えるし、最近私も映画を一人で見に行く感覚で歌舞伎を観に行ってしまうぐらい気軽に行けてしまいます。イヤホンガイドを聞けば丁寧に解説もしてくれるし、立派な劇場の空気を感じるだけでも気持ちよくなれると思います。是非まだ観たことがない、最近観てないという方は、歌舞伎おすすめです!
文責者:藤崎春花
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