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青春を懸けた書道パフォーマンス

  • 執筆者の写真: ゼミ 横山
    ゼミ 横山
  • 5月25日
  • 読了時間: 6分

高柳咲音



はじめに


日本の伝統芸能である書道に、音楽やダンスといった身体表現を取り入れた「書道パフォーマンス」。文字の美しさだけでなく、体全体を使った動きや演出、そして作品を作り上げる過程を観客と共有できる点が大きな魅力です。


2026年1月11日、イオンモール幕張新都心にて「第5回書道パフォーマンスグランプリ」の決勝大会が開催されました。本大会は「仲間と一生懸命に練習した成果をたくさんの人たちに見てほしい」という声にこたえ、2015年に四国で始まりました。2021年からは規模を全国に拡大し、現在では11エリアの予選を勝ち抜いた上位14校が決勝大会に出場しています。各校は7分間の持ち時間の中で、縦4m×横6mの用紙にパフォーマンスを披露し、「書道」と「パフォーマンス」の両側面から審査されます。


三連休の中日に開催されたこともあり、会場となったグランドコートは多くの買い物客で賑わっていました。「書道?」「ダンスもしているの?」と通りすがりの人々が次々に足を止め、その視線はステージに釘付けになっていました。観客の心を一瞬でつかみ、会場全体を熱狂させた高校生たちの本気のパフォーマンス。その中から、特に印象的だった高校をご紹介します。大会の詳細については、こちらのホームページをご覧ください。


(筆者撮影)



仙台育英学園高等学校(東北北海道大会代表)


まず、安定した所作と洗練された落ち着きを見せたのが、仙台育英学園高等学校です。特筆すべきは、用紙をローラーで黒く塗りつぶすという、既存の書道の常識を覆すような斬新な演出です。黒の背景があることで、その上に重ねられた白や金色の文字、そしてピンクで描かれた桜の模様がより鮮烈に感じられました。


部員16名が着用していた、上半身が黒で下半身がピンクの衣装は、背景の黒と桜の模様に調和しており、視覚的な統一感が感じられました。パフォーマンス中は文字を書く部員、和太鼓を叩く部員、傘や扇子などの小道具を使って華麗に舞う部員と、一人ひとりが明確な役割を持ち、その全員の所作に無駄がありませんでした。桜の儚い無常観や命を芽吹かせる精神性、咲き誇る美しさをテーマに掲げた本作は、激しい動きの中でも一貫して全員の集中力が保たれており、文字の正確さはもちろん、完成した作品全体のバランスも調和がとれていました。


終盤では、中央で金色の「花盛」という文字を書く部員を筆頭に左右に3人ずつが並び文字を書いていくのですが、全員の動きが完全にシンクロし、最後の一画を書き終えるタイミングがぴたりと一致していました。最後の文字を書き上げる瞬間に向けて、和太鼓の音や部員たちの手拍子が観客の熱気を最高潮に引き上げ、会場が拍手で包み込まれました。日本文化の豊穣を願うという強いメッセージが、一糸乱れぬ身体表現と確かな書の技術によって表現された完成度の高いパフォーマンスでした。



兵庫県立伊川谷北高等学校(西近畿大会代表)


派手な演出を用いる他校とは対照的に、伊川谷北高等学校の演技には、観客の息をのませるような静寂の美がありました。その一貫した世界観は、演技開始前の入場シーンから始まっており、舞台袖から現れた15名の部員たちは、角を曲がる際に垂直を意識した鋭い足捌きを見せ、その凛とした姿勢で会場の空気を一変させました。黒とえんじ色の袴衣装と、前髪を上げたアップヘアで統一され、彼女たちが纏う気高い雰囲気は、武田信玄の戦いを描いた「風林火山」というテーマそのものでした。


同校において特筆すべきは、部員間の緻密な連携です。まず、ローラーによって背景に雄大な山や日の出、竹林の絵が手際よく描き出されました。その後、絵の上に「風林火山」の文字が力強く書かれていくのですが、筆を隣の部員に渡す動作から墨を吸い取る裏方の動きに至るまで、舞台上に空白の時間が存在しません。部員がそれぞれ異なる役割を担いながら、全員が作品を完成させるための不可欠な要素として機能していました。


パフォーマンス中には、部員が異なる動きをしながらも、音楽に合わせて一斉に筆を止め、息の揃ったダンスをする場面が見られました。個々の運筆と集団での動きの対比が、チームとしての一体感を強調していました。部員全員が一つの作品の世界観を共有しており、その緊迫した空気や立ち振る舞いを通じて、書道が持つ静かな力強さが表現されていました。



本庄東高等学校(関東大会代表)


上位入賞校の中でも、本庄東高等学校のパフォーマンスは独自の構成が際立っていました。多くの高校がローラーやスプレーなどの視覚的な効果を取り入れるなか、制服姿で登場した14名の部員は、音楽や小道具を一切使わず、筆と墨汁、そして自らの身体のみを用いた表現に徹していました。この最小限の道具を用いた構成は、書道パフォーマンスの根幹である「書」と「身体」の表現を強調するものでした。


同校において特筆すべきは、観客や審査員、さらには大会スタッフまでをも巻き込む、遊び心あふれる演出です。部員たちは笑顔で周囲へ視線を送り、発声や歌唱を交えながら文字を書き進めていきました。その運動量と声量は今大会の団体の中でも群を抜いており、観客の視線を釘付けにしていました。部員全員の迷いのない堂々とした立ち振る舞いからは、パフォーマンスに本気で取り組む真摯な姿勢が感じられました。


その快活なパフォーマンスと対照をなしていたのが、作品としての書表現です。猫のように自由に、午年だけに馬鹿になれという彼女たちの想いが、白地に黒一色の篆書体に込められました。演技中の軽快な動きとは異なり、紙面に書かれる文字は日々の鍛錬の積み重ねを想起させる重厚なものでした。書という伝統的な表現に真摯に向き合いながらも、同時に観客とその時間を共有し、自らも楽しむというエンターテインメントとしての側面が両立されていました。



おわりに


どの高校も美しさや力強さといった独自の強みを持ち、甲乙つけがたい素晴らしいパフォーマンスでした。何より、演者自身が書道を楽しんでおり、その楽しさを観客へ届けようとする熱意が感じられました。その中でも入賞した高校に共通していたのは、「書」と「パフォーマンス」としての動きが自然に融合していた点であると思います。筆を運ぶ動きだけでなく、移動や所作を含めた全ての動きが一つの作品として完成されていました。


表彰式では、ライバル同士が互いの健闘をたたえ合い、温かい拍手を送り合う姿が印象的でした。結果を受けて喜ぶ生徒、悔し涙を浮かべる生徒とさまざまでしたが、どの高校も凛とした空気をまとい、強い意志が感じられました。私たちが目にしたのは数分間の演技にすぎませんが、その背景には仲間と切磋琢磨し、練習を積み重ねてきた日々があることを実感させられました。書道にまっすぐ向き合う高校生たちの姿勢は、会場にいた多くの観客の心に強く響いたはずです。

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