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魔法の具現化における身体 ~舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』より~

  • 執筆者の写真: ゼミ 横山
    ゼミ 横山
  • 2023年4月11日
  • 読了時間: 4分

更新日:2023年6月6日


和田実莉


はじめに


世界200か国79言語に翻訳され、初版から25年経った今なお世界中で愛され続ける作品、『ハリー・ポッターシリーズ』。J.K.ローリングの描き出した魔法の世界は、小説のみならず、映画化、舞台化などを通じて子供から大人まで幅広い層に親しまれています。中でも舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、60以上の演劇賞を獲得するなど記録的な成功を収め、世界7都市目(アジアでは初)となる東京公演がまさに今行われています。


主人公ハリー・ポッターを演じるのは藤原竜也、石丸幹二、向井理のトリプルキャスト、制作にはジョンー・ティファニーをはじめとする世界トップクラスのクリエイターが集結し、壮大な舞台となっています。私は9月7日の公演(ハリー・ポッター役:石丸)を鑑賞し、まさに魔法が現実になる瞬間を目の当たりにしました。


この作品における魔法を具現化する機械技術は圧倒されるものでしたが、それ以上に演者の身体の動きや表現方法が魔法の演出を引き立てていると感じました。そこで今回は、本作に欠かせない魔法の演出における身体の重要性について考察していきたいと思います。



赤坂ACTシアター外観(公式HPより https://www.harrypotter-stage.jp/



初めて魔法に触れるシーン


ハリー・ポッターの息子、アルバス・ポッターとクラスメイトがホグワーツで初めて杖を使うシーン。魔法に慣れていない彼らが杖に振り回されながらも技を習得していく部分は、俳優たちの動きが印象的でした。機械技術を使うのは杖の先が光ることや効果音のみで、映画のようなCGが使えない中、魔法によって杖に振り回される動きの表現は踊るでもなく、例えるとするならパントマイムに近いような、独特の身体の動かし方がされていました。


それは、杖を持つ手首を固定し、その手首に動きの重さを与えることで操られているような印象を持たせるというものでした。それに加え、このシーンでは7人ほどいた演者全員の動きに統一感があったことにより、目には見えない魔法という不思議な力が働いているような空間になったのではないかと感じました。



劇中写真(公式HPより https://www.harrypotter-stage.jp/



ディメンターの具現化


小説版、映画版共に重要なシーンに登場するディメンター。一度ハリー・ポッターシリーズに触れたことがある人ならば、忘れられない印象的なキャラクターなのではないでしょうか。ディメンターは黒いマントにフードで顔は見えない不気味なビジュアルで、映画版ではフルCGで描かれます。今回の舞台版では、ビジュアルはそのままに、人間が実際に演じることでディメンターは現実のものとなり、劇場空間に現れます。


登場は全てワイヤーを用い宙に浮いた状態で、舞台空間を彷徨う様子は不気味さと美しさを兼ね備えたものでした。この具現化の完成度の高さは、ダンサーの起用による効果だと考えます。


このダンサーですが、アクロバティック・ダンスカンパニーG-Rocketsに所属する方々で、驚異的な身体能力を生かしたアクロバット、エアリアル(空中)パフォーマンス、その他、様々なダンスを得意としています。出演するダンサーの中には、新体操やテーマパークダンサーを経験している方もおり、スキルの高さが今回の舞台に還元されているように思います。


手先まで綺麗なしなやかさと動きのインパクト、顔の角度の調節による不気味さ、これらの両立はダンサーの技術によるものであり、ワイヤーに吊られていても自然に見えるディメンター作り出したと言えるでしょう。



ポリジュース薬を使った変身のシーン


原作では「ハリー・ポッターと秘密の部屋」で登場するポリジュース薬。この薬を飲むと一定時間なりたい人物に変身できるというもので、映画版では変身の際に身体が伸び縮みしたり、顔や体が対象そのものに変化してしまうというのが印象的でした。


今回舞台でこのポリジュース薬が使われると知り、どんな演出になるのかと不思議に思っていましたが、このシーンは二人羽織を応用し見事に表現されていました。


衣装がローブであることも功を奏し、二人の役者がグネグネと動きながら交代していく様子はとても面白く、舞台ならではの演出であると感じました。ローブが揺れることで身体が変わっている感じがよく伝わり、古典的でありながらもどこか現実にはないような印象、つまり魔法の具現化を感じた瞬間でした。



おわりに


ここまで述べたように、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では魔法を現実のものとして表現するために、役者の身体を上手く演出に取り入れていることが分かりました。よくあるダンスシーンなどではなく、それぞれ個性的な身体表現を工夫して魔法を表現したことも、この作品の特徴であり、面白さに繋がっているのではないかと感じます。


作品自体はもちろんですが、上演が行われている赤坂ACTシアター周辺でも、ハリー・ポッターの世界にどっぷりとつかれるような魅力的なスポットがたくさん展開されています。


2023年5月までの長期公演です。ハリー・ポッターが好きなあなたも、まだ知らないというあなたも、魔法が現実になる夢のような瞬間を、体感しに行ってみてはいかがでしょうか。


筆者撮影


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